『ちいちゃんのかげおくり』って、ずっと国語の教科書に掲載されてるんじゃないの?
本文については後ほど詳しく解説しますが、戦争中に普通の家族に起きた、悲しく辛い出来事を描いたお話です。
この『ちいちゃんのかげおくり』が国語の教科書に掲載されています。
つい先日、私より少し若い友人のお宅にお邪魔していた時のこと。
下校してきた子供さんとママである友人の会話の中に、
「今日の宿題はちいちゃんのかげおくりの感想文なの。」
「先生も学校で習ったんだって、ママもこのお話知ってる?」
「ママも学校で習ったことあるよ~」
というやり取りがあったんです。
昭和50年代中頃に小学生だった私は、『ちいちゃんのかげおくり』知らなくてピンと来ず。
「私は知らないし、習った記憶もないけど、このママ(友人)は知ってるのか…」
という疑問が、私の頭に浮かびました。
改めて他の友人にも聞いてみたところ、知ってる人もいれば知らない人もいて、やっぱり何となく年代で違う印象だったんです。
というわけで『ちいちゃんのかげおくり』について、
- 教科書に掲載され始めたのはいつ頃から?
- 何年生で習うのか?
- どうして小学校で習うのか?
- 何を子供に伝えたいのか
- 作者は誰?
などを、詳しく調べてみました!
・ちいちゃんのかげおくりのあらすじや死因は?実話なのか感想も!
ちなみに、かげおくりは、
- 良く晴れた雲が少なくてきれいな青空の時に、地面に自分の影を映す
- その影を瞬きをしないで10秒以上見つめ続ける
- そのまま、瞬きを我慢して空を見上げる
- 見上げた空に自分の姿をした白い影が浮かび上がる
という遊び方をします。
かげおくりのやり方や仕組みは?意味がわかると怖い?
Contents
ちいちゃんのかげおくりは小学生の国語の教科書にいつから掲載されてる?
『ちいちゃんのかげおくり』について調べていくうちに、幼児向けとしては珍しく、太平洋戦争末期を描いた作品だということがわかってきました。
戦争中の様子を描いていて、子供向けの読み物としては悲しいお話と言えるでしょう。
戦争は子供には難しすぎたり、重いテーマな感じがしますが、『ちいちゃんのかげおくり』では、子供にもわかりやすく優しい文章で当時の様子を伝えてくれます。
私のように、知らなかったという人や、絵本でしか読んだことがない人もいる一方で、国語の授業で実際に習ったという人もいるんじゃないでしょうか?
さて、戦争中の悲しい出来事を描いた、『ちいちゃんのかげおくり』というお話は、小学校の教科書にいつから掲載されているのでしょうか?
いつから掲載されてる?
『ちいちゃんのかげおくり』のお話、知っている人と、知らない人がいるんですよね。
そこで、
「もしかしたら、小学生だった年代で違うからなのでは?」
という疑問を解決します!
実は、昭和61年から掲載されているようです。
出典元:光村図書 教科書クロニクル
その頃に小学生だった人は、
「そう言えば、国語の教科書で読んだことがある」
「授業で感想文を書いた」
「子供の宿題で音読させられた」
「戦争について話し合った」
というような、経験や記憶があるんじゃないかと思います。
昭和61年が国語の教科書で習った時期の境目のようです。
さらに、何年生から習っていたか?にもお答えしていきます。
何年生で習う?
戦争中のお話である、「ちいちゃんのかげおくり」。
小学生になったばかりの1年生でも、お話を読むことは出来るでしょう。
でも、文章から戦争の悲惨さを、詳しく理解したり想像するのは、まだ難しいところがあるかもしれません。
では、『ちいちゃんのかげおくり』何年生で習うのか?
実は小学校3年生の国語の教科書に掲載されているんです。
平和学習として戦争について触れるのは、小学校3年生が最初みたいですね。
なぜ小学生の教科書で習う?伝えたいことは?
これまでに書いてきたように、『ちいちゃんのかげおくり』」は、戦争児童文学です。
お父さん、お母さん、お兄ちゃんと4人で暮らしていた、幼いちいちゃん。
幸せに暮らしていた、ちいちゃんの家族が戦争により、悲しい結果を迎えてしまいます。
空襲で家族と離れ離れになり、一人ぼっちになってしまったちいちゃん。
それでも空腹に耐えて、懸命に生きようとしたちいちゃんの目線で、ありのままに戦争が描かれているのです。
戦争を知らない現代の子供達には、想像もつかない出来事を、戦争を激しく否定するような言葉を使わずに
- 戦争とはどんなものか
- 空襲で街がめちゃくちゃになってしまう
- 家族がバラバラになり、一人ぼっちになってしまう
- 当たり前の生活が出来なくなってしまう
など、しっかりと伝えてくれています。
本文を知ると、もっと戦争の怖さを受けとめて、平和についても話し合えそうです。
ちいちゃんのかげおくりの教科書に載っている本文は?
小学校3年生の国語の教科書に掲載されている、『ちいちゃんのかげおくり』ってどんなお話なんでしょう。
絵本の本文をご紹介したいと思います。
「ちいちゃんのかげおくり」
…あまんきみこ作「かげおくり」って遊びをちいちゃんに教えてくれたのは、お父さんでした。
出征する前の日、お父さんは、ちいちゃん、お兄ちゃん、お母さんをつれて、先祖のはかまいりに行きました。その帰り道、青い空を見上げてたお父さんが、つぶやきました。
「かげおくりのよくできそうな空だなあ」
「えっ、かげおくり」
と、お兄ちゃんがきき返しました。「かげおくりって、なあに」
と、ちいちゃんもたずねました。「とお、数える間、かげぼうしをじっと見つめるのさ。とお、と言ったら、空を見上げる。すると、かげぼうしがそっくり空にうつって見える」
と、お父さんがせつめいしました。「父さんや母さんが子どものときに、よく遊んだものさ」
「ね。今、みんなでやってみましょうよ」
と、お母さんが横から言いました。ちいちゃんとお兄ちゃんを中にして、四人は手をつなぎました。
そして、みんなで、かげぼうしに目を落としました。「まばたきしや、だめよ」
と、お母さんが注意しました。
「まばたきしないよ」
ちいちゃんとお兄ちゃんが、やくそくしました。「ひとうつ、ふたあつ、みいっつ」
と、お父さんが数えだしました。「ようっつ、いつつう、むうっつ」
と、お母さんの声も重なりました。「ななあつ、やあっつ、ここのうつ」
ちいちゃんとお兄ちゃんも、いっしょに数えだしました。「とお」
目の動きといっしょに、白い四つのかげぼうしが、すうっと空に上がりました。「すごうい」
と、お兄ちゃんが言いました。
「すごうい」
と、ちいちゃんも言いました。「今日の記念写真だなあ」
と、お父さんが言いました。「大きな記念写真だこと」
と、お母さんが言いました。次の日、お父さんは、白いたすきをかたからななめにかけ、日の丸のはたにおくられて、列車に乗りました。
「体の弱いお父さんまで、いくさに行かなけらばならないなんて」
お母さんがぽつんと言ったのが、ちいちゃんの耳には聞こえました。ちいちゃんとお兄ちゃんは、かげおくりをして遊ぶようになりました。
ばんざいをしたかげおくり、
かた手をあげたかげおくり、
足を開いたかげおくり、
いろいろなかげを空に送りました。けれど、いくさがはげしくなって、かげおくりなどできなくなりました。
この町の空にも、しょういだんやばくだんをつんだひこうきが、とんでくるようになりました。
そうです。広い空は、楽しい所ではなく、とてもこわい所にかわりました。
夏のはじめのある夜、くうしゅうけいほうのサイレンで、ちいちゃんたちは目がさめました。
「さあ、いそいで」
お母さんの声。外に出ると、もう、赤い火が、あちこちに上がっていました。
お母さんは、ちいちゃんとお兄ちゃんを両手につないで、走りました。
風の強い日でした。「こっちに火が回るぞ」
「川の方ににげるんだ」
だれかがさけんでいます。風があつくなってきました。ほのおのうずが追いかけてきます。お母さんは、ちいちゃんをだきあげて走りました。
「お兄ちゃん、はぐれちゃだめよ」
お兄ちゃんがころびました。足から血が出ています。ひどいけがです。
お母さんは、お兄ちゃんをおんぶしました。「さあ、ちいちゃん、母さんとしっかり走るのよ」
けれど、たくさんの人に追いぬかれたり、ぶつかったりー
ちいちゃんは、お母さんとはぐれました。「お母ちゃん、お母ちゃん!」
ちいちゃんはさけびました。そのとき、知らないおじさんが言いました。
「お母ちゃんは、後から来るよ」
そのおじさんは、ちいちゃんをだいて走ってくれました。暗い橋の下に、たくさんの人が集まっていました。
ちいちゃんの目に、お母さんらしい人が見えました。「お母ちゃん!」
と、ちいちゃんがさけぶと、おじさんは
「みつかったかい、よかった、よかった」
と下ろしてくれました。でも、その人は、お母さんではありませんでした。
ちいちゃんは、ひとりぼっちになりました。ちいちゃんは、たくさんの人たちの中でねむりました。
朝になりました。
町の様子は、すっかりかわっています。あちこち、けむりがのこっています。
どこがどうなのかー。
「ちいちゃんじゃないの」
という声。ふり向くと、はす向かいのうちのおばさんが立っています。「お母ちゃんは。お兄ちゃんは」
と、おばさんがたずねました。ちいちゃんは、なくのをやっとこらえて言いました。
「おうちのとこ」
「そう、おうちにもどっているのね。おばちゃん、今から帰るところよ。いっしょに行きましょうか」おばさんは、ちいちゃんの手をつないでくれました。二人は歩きだしました。
家は、やけ落ちてなくなっていました。「ここがお兄ちゃんとあたしの部屋」
ちいちゃんがしゃがんでいると、おばさんがやって来て言いました。「お母ちゃんたち、ここに帰ってくるの」
ちいちゃんは、深くうなずきました。「じゃあ、だいじょうぶね。あのね、おばちゃんは、今から、おばちゃんのお父さんのうちに行くからね」
ちいちゃんは、また深くうなずきました。その夜、ちいちゃんは、ざつのうの中に入れてあるほしいいを、少し食べました。
そして、こわれかかった暗いぼうくうごうの中で、ねむりました。
「お母ちゃんとお兄ちゃんは、きっと帰ってくるよ」くもった朝が来て、昼がすぎ、また、暗い夜が来ました。ちいちゃんは、ざつのうの中のほしいいを、また少しかじりました。
そして、こわれかかったぼうくうごうの中でねむりました。
明るい光が顔に当たって、目がさめました。
「まぶしいな」
ちいちゃんは、暑いような寒いような気がしました。ひどくのどがかわいています。いつの間にか、太陽は、高く上がっていました。そのとき、
「かげおくりのよくできそうな空だなあ」
というお父さんの声が、青い空からふってきました。「ね、今、みんなでやってみましょうよ」
というお母さんの声も、青い空からふってきました。ちいちゃんは、ふらふらする足をふみしめて立ち上がると、たった一つのかげぼうしを見つめながら数えだしました。
「ひとうつ、ふたあつ、みいっつ」
いつの間にか、お父さんのひくい声が、重なって聞こえだしました。「ようっつ、いつつう、むうっつ」
お母さんの高い声も、それに重なって聞こえだしました。「ななあつ、やあっつ、ここのうつ」
お兄ちゃんのわらいそうな声も、重なってきました。
「とお」ちいちゃんが空を見上げると、青い空に、くっきりと白いかげが四つ。
「お父ちゃん」
ちいちゃんはよびました。「お母ちゃん。お兄ちゃん」
そのとき、体がすうっとすきとおって、空にすいこまれていくのが分かりました。一面の空の色。ちいちゃんは、空色の花畑の中に立っていました。見回しても、花畑。
「きっと、ここ、空の上よ」
と、ちいちゃんは思いました。「ああ、あたし、おなかがすいて軽くなったから、ういたのね」
そのとき、向こうから、お父さんとお母さんとお兄ちゃんが、わらいながら歩いてくるのが見えました。「なあんだ、みんな、こんな所にいたから、来なかったのね」
ちいちゃんは、きらきらわらいだしました。わらいながら、花畑の中を走りだしました。
夏のはじめのある朝、こうして、小さな女の子の命が、空にきえました。それから、何十年。
町には、前よりもいっぱい家がたっています。
ちいちゃんが一人でかげおくりをした所は、小さな公園になっています。青い空の下、今日も、お兄ちゃんやちいちゃんぐらいの子どもたちが、きらきらわらい声を上げて、遊んでいます。
………
「引用元:小3の教科書に載っている…「ちいちゃんのかげおくり」…」
いかがでしたか?
空襲を受けて家族と離れ離れになってしまい大好きだった家族に、また会えることを胸に空腹にも耐えて一生懸命生きようとする、ちいちゃん。
空襲の様子や、ちいちゃんの命が儚く散ってしまう様子が目に浮かびますよね。
普通の人の暮らしが、戦争によってこんなにも悲惨なことになるのかと、私は読んでいて涙が出てしまいました。
ちいちゃんのかげおくりの教科書の会社はどこ?
小学校3年生の国語の教科書に掲載されている、『ちいちゃんのかげおくり』
では、この教科書を出版している会社はどこなんでしょうか?
調べてみたところ、光村図書出版という会社から出版された教科書に掲載されています。
平成27年度改訂の国語3年生の下に、現在も掲載されていて楽天で購入することも可能です。
これを機会に教科書の他の物語を読んでみたいという方は、ぜひチェックしてみてください。
(「ちいちゃんのかげおくり」の絵本も、この記事の下の方で紹介しています。)
光村図書出版は、小学校、中学校、高等学校の教科書や、教育関係の書籍発行を中心にしている出版会社なので、
『ちいちゃんのかげおくり』を、教科書で読んだことがある人が多いというのも、納得できますね。
ちいちゃんのかげおくりの本文や絵本の作者について
出典元:https://ameblo.jp/miyako-yusa/entry-11946141034.html
『ちいゃんのかげおくり』の作者は あまんきみこ さん。
あまんきみこさんは、数々の賞を受賞されている児童文学作家なんですよ。
『ちいちゃんのかげおくり』の以外にも、小学校の国語の教科書に掲載されている作品があります。
『おにたのぼうし』
『白いぼうし』
『きつねのおきゃくさま』
など、知ってる人も多いかもしれません。
『ちいちゃんのかげおくり』を知らなかった私ですが、あまんきみこさんのお名前には聞き覚えがありました。
作品名も記憶にある物がいくつか出てきましたよ。
絵の作者は 上野紀子 さんです。
絵本作家でもあり画家でもある、上野紀子さん。
いろいろな絵本の挿絵を手がけられた作家さんで、上野さんも数々の受賞歴があります。
ご主人の中江嘉男さんとの合作、ねずみくんシリーズの『ねずみくんのチョッキ』は、上野紀子さんの代表的な作品です。
『ねずみくんのチョッキ』が気になった方はこちら。
いまだに愛され続ける、1974年発売の作品です。
あまんきみこさんの、優しい中にも情景をわかりやすく伝える文章と、上野紀子さんの温かみのある挿絵で、戦争が舞台で暗くなりがちなお話を、子供が怖がり過ぎずに読める本です。
ちいちゃんのかげおくりをネットで買うには?
ちいちゃんのかげおくりは、小学校の教科書でしか読めないわけではなく、作者はあまんきみこさん、絵は上野紀子さんで、あかね書房から書籍として出版されています。
または、手軽に通販でも購入可能です。
子供にもわかりやすく、戦争について伝えられる1冊として揃えてみてはいかがでしょうか。
まとめ
『ちいちゃんのかげおくり』の、ふとした疑問から始まりましたが、
- 教科書に掲載され始めたのは昭和61年から
- 小学校3年生の国語の時間に習う
- 作者は あまんきみこさん
- 挿絵は 上野紀子さん
- 戦争の怖さや平和の大切さをわかりやすく伝えたい物語
という事がわかりました。
このお話には、戦争を激しく否定するような表現はなく、戦争の悲惨さを知らない現代の子供たちに、戦争がどんなものかを教えてくれる物語です。
平和の尊さ、家族のいる幸せを、伝えてくれる『ちいちゃんのかげおくり』。
現代を生きる子供たちが家族や友達と、戦争や平和について話し合うきっかけとして、ふさわしいお話だと思いますので、かげおくりという遊びも楽しみつつ、学びの時間を作ってみるのもいいですね。
ちいちゃんのかげおくりのあらすじや死因は?実話なのか感想も!
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